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青森地方裁判所 昭和27年(行モ)2号 決定

申立人は、被申立人が昭和二十七年一月九日道路交通取締令第四十九条の規定により申立人に対してなした申立人の運転免許(百石町公安委員会昭和二十五年二月二十日交付普通免許第三号)を昭和二十七年二月六日から同年七月四日まで停止する行政処分の執行を当裁判所昭和二十七年(行)第九号行政処分取消請求事件の判決が確定するまで停止するとの決定を求める旨申立て、その理由とするところは被申立人は申立人の運転免許停止行政処分の事由として「申立人は昭和二十六年十一月二十日普通貨物自動車青第一四〇四号を運転百石町より大三沢町に至り中央通りに於て一旦荷物を下ろし次の店へ赴くべく出発中央通り一丁目県道路上に差し掛つた際直前方のみ注視して左右に対する注意を欠いた為め折柄其の場で路上遊戯中の幼児を轢き即死せしめたるものである。尚荷物を下ろすべく停車したる際右側駐車していたもの」とし申立の趣旨記載の如き行政処分を為すに至つたものである。

然れども右は全く真相を得たものでなく右の内一旦荷物を下ろし次の店へ赴くべく出発したこと及幼児を轢き死亡せしむるに至つたこと、右側駐車をしていたことは認めるも其の余は全く誤認たるを免れないものである。

即ち申立人は当日雇主である株式会社村井酒造店の命により同会社所有の前記貨物自動車を運転し前記県道(巾三間半の横丁)に入り松田屋酒店(滝端重一)方へビールを下ろし次に裏側横丁の竹内酒店に赴く為め運転台に入り前方並に左右を充分注視し人間は勿論何等の障害物も認められなかつた為め機関に点火爆音を調整したる後発車し最徐行の速力で左側寄に前進しかくまん食堂長谷川直吉方前方を通過し、約数米先の丁字路を右折せん為め一旦停車したところ、右かくまん食堂主長谷川直吉二女育子(満一年五月)を同店出入口左前方約一間半位の所で而も前輪通過後、後輪(ダブルタイヤー)の外側タイヤーで頭部半面を轢き重傷を与え死亡せしむるに至つたものである。

申立人は右の如く充分注意して発車したるに拘らず轢殺するに至つたのは前記幼児に於て機関の爆音に誘われ監護者の不注意の隙に乗じ而も申立人運転の自動車の運転台が被害者方の出入口前を徐行通過し申立人の視界外となつた後戸外に走り出し、危険の感念なき為め遂に自動車に接近し過ぎ後輪外側タイヤーで轢かれるに至つたものであることが真実で、路上遊戯中等の事実全然なく本件事故は全く不可抗力に基くものであることを確信するものである。然るに被申立人は前記真相を究明することなく一方的に申立人の行為は道路交通取締令第四十九条に該当するものと誤認し、何等の情状をも酌量することなく百五十日間の運転免許の停止処分を命ずるに至つたのは全く違法処分たるを免れないものであり、仮りに人命を尊しとする法の精神より本件事故は多少の過失の責任は免れないとしても、申立人並車輪主である株式会社村井酒造店は被害者遺族に対し深甚なる弔意と誠意を示し、香奠金弍万円花輪一対慰藉料金五万円を連名で提供し、且つ申立人は別途に香奠金弍千円を提供し、円満示談解決済のものであること申立人は昭和十年運転免許を得て以来今日に至る迄無事故のものであること及無資産のものである為、五ケ月の長期間運転免許の停止は家族六人の生活に致命的打撃を蒙ること等より本件は苛酷極まる厳罰的違法処分と思慮せらるゝものである。

仍つて申立人は以上を理由とし青森地方裁判所に「本件行政処分取消の訴を提起中に付き之が判決確定に至る迄申立人の償うことの出来ない損害をさける為め、本件行政処分の停止の裁判相成度本申請をするものである」というにあるが当裁判所は本件記録上未だ申立趣旨記載の期間運転免許の停止により申立人の蒙るべき損害が償うことのできないものであるとは認め難い。

よつて本件申立はこれを却下すべきものとし主文のとおり決定する。

(裁判官 新妻太郎 小友末知 野原文吉)

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